教科準備室に入る。
まだ、職員会議が終わっていないのかロックオンの姿はまだなかった。
鍵はティエリアがいつ来ても良いようにと開けておいてくれている。
中に入って、教科書を出し今日やったテストの問題を思い出して答え合わせをしていく。
今日で終わったテスト期間。
最終日にはロックオンの担当している世界史のテストがあった。
ティエリアはロックオンの授業用の資料作りの手伝いをしていたこともあって、問題があっさり解けた。
教科書だけでは足らないものを、ロックオンは作った資料で授業を行う。
勿論、授業中にテストに出ることは言っていたが教科書よりもそちらに比重が多かったように思えた。
テスト終了後の教室が騒がしかったのを思い出す。
教科書よりも授業中に渡された資料の方からの問題が多く教科書中心の勉強をしていた人たちは悲鳴を上げていた。
中にはその資料をファイリングせずに捨ててしまった者も居たようだった。
ティエリアはそう思い出しながら英単語のスペルの答え合わせを始める。
しばらくそれに没頭していると、準備室の扉が開きロックオンが入ってきた。
「お。居たのか」
部屋の中にティエリアが居るのを確認すると微笑んで中に入ってくる。
「英語の答え合わせか?」
「はい」
ティエリアの手元にある物を見てロックオンは声を掛ける。その手元にあるのが、英語の他に古文があったのだが、そこにない教科に気付く。
「世界史は大丈夫そうか?」
自身の担当している教科が気になるようでロックオンは手元をのぞき込む。
「資料作りを手伝ったのがよかったみたいです」
「ああ、そっか」
そうだったなと安堵の表情を浮かべるロックオンにティエリアは思わず微笑む。
「けど、あんなに資料の方から問題が出るとは思わなかった」
「あ?……ああ、教科書の記述よりも面白くて好きなんだ」
「教科書中心に勉強してた人達が出来なくてショック受けていた」
あの教室を再び思い出してロックオンに教える。
「だから、あれだけ資料から出すぞって言ったのにな」
自分の授業での言動を思い出しロックオンは腕組みをする。
「出るとは知っていても、あそこまでは考えなかったんじゃないか」
実際、自分もそんなには考えていなかった。
資料作るのを手伝っていなかったら自分も彼らと同じように答えがわからずに泣きを見ていたかもしれない。
「まあ、何にせよテストお疲れさん」
「はい」
ティエリアは教科書を閉じる。
数日後には夏休みに入る。こうして教科準備室で会うのもしばらくなくなる。
ティエリアは立ち上がりロックオンの前に立つ。
「テスト期間中はそれぞれ忙しかったからな」
ロックオンがティエリアの頬に触れて、久しぶりだと呟いた。ティエリアも久々に感じるロックオンの温もりに瞼を閉じた。
ロックオンはそんなティエリアの唇にキスを落とした。
その感触に閉じていた目を開けると、ロックオンの顔が目の前にあったのでティエリアが頬を赤く染める。
その反応が可愛くてロックオンは思わず抱きしめる。
ティエリアは久しぶりに感じるロックオンの腕の匂いに安心する。そして、考えていたことを言おうと顔を上げる。
「どうした?」
ロックオンはそんなティエリアに気付いて抱きしめたまま顔を見つめる。
「せ、先生。夏休み、何処か行かない?」
「夏休み?」
ティエリアの口から出た言葉にロックオンは意外な表情を浮かべていた。
「都合、悪い?」
首を傾げ不安そうな目をしてロックオンを見つめるティエリアにロックオンは大丈夫と言う。
「ただ、ビックリしただけだ」
「……」
抱きしめなおしてロックオンはティエリアの耳元で呟く。
「俺も、考えてたんだけどな。先越されたな」
ティエリアは言われたロックオンの言葉に嬉しさがこみ上げる。
「折角の夏休みだしな」
ティエリアの額にキスをして何処に行くかまた決めないとなと続けた。
to be.....