*carbuncle


Crystallize



青年は夜も更け街が静まり返った時間に準備を開始する。

「ロックオン、行くぞ」
「ああ。今行く」

扉が開き、目元と顎に傷のある青年が顔を覗かせ、室内にいる青年に声を掛けた。
部屋にいたロックオンと呼ばれた青年はコートを手に取り外へと向かった。
扉に手をかけて背後を振り返る。
振り返った先にはシャツにパンツ姿の線の細い少年がいた。

「じゃあ、ティエリア」
「気をつけて」

そう言い残し、外へと出て行った。
ロックオンがティエリアと共に過ごすようになり、一ヶ月が経とうとしていた。
今日のようにヴァンパイアハンターとして、夜の見回りをしていた時だった。
二人一組での見回りはハンター協会の規則で数日に一度回ってくる。
ヴァンパイアに関する違法行為は深夜に多い。
ロックオンは顔に傷を持つラッセとコンビを組んで日々ハンターの仕事をしていた。
何事もない夜もあるが、違法行為を行っている者を何人も摘発、抹消したりする日もある。
ヴァンパイアには同意の上での吸血行為しか認められていない。
無理強いは違法行為に当たる。通常の人間よりも力が強いヴァンパイアから逃げることは困難だ。
そんな時の為にヴァンパイアハンターはこうやって見回りをして取り締まっている。
忠告を聞き入れればよし、もし抵抗すればハンターたちも強硬手段に出る。
何度も違法行為を行えば改善の余地なしということで、処分する場合もある。
それが、人間とヴァンパイアの間で取り決められている。
ティエリアはヴァンパイアに襲われていたところをロックオンが助けたのだった。


『大丈夫か?』


襲っていたヴァンパイアを手刀で気絶させ、襲われていたティエリアに声を掛ける。
初めはその美貌に少女かと見間違ってしまったが、口調は少女とはかけ離れたものだった。


『平気だ』


その返答と態度で男だと分かり、だったら抵抗なりすればいいと思ったが、立ち上がった姿は華奢すぎて、言うのをやめた。
聞けばちゃんとした住まいはなく、ホテルを転々としているというので、家に住まわせた。
相方のラッセには見知らぬ他人を住まわせるのは止めた方がいいと言われたが、ロックオンは聞き入れなかった。
ティエリアの発せられる強気な言葉や態度とは違い、瞳が何故か頼りなげで、一人になることを怖がっているようにも見えてしまったからだ。
そんなロックオンにラッセは肩を竦めて俺は知らないからなと言っていた。
けれど、ロックオンにはティエリアがそんなに危険な人物には思えなかった。
そうやって、暮らし始めて一ヶ月、日々はいたって穏やかだった。




to be.....