ヴェーダの中で、ティエリアは意識を目覚めさせた。
リボンズとの戦いを終え、プトレマイオスUの無事も確認し、胸を撫で下ろした後の記憶がない。
きっと緊張の糸が切れてしまったのだろう。
ティエリアはそう思い直し改めてこのヴェーダの中を見つめる。
意識だけとはいえ、まだこの世にいることに複雑な気持ちは隠せない。
皆を守るため、ヴェーダを掌握したのは自分の意志だ。
けれどあそこまで、自分は人間だと言い張っていたのにと、自分の中の矛盾に違和感を感じずにはいられない。
ティエリアは感じた違和感に蓋をするように瞳を閉じる。
感じるヴェーダの存在に笑みを零す。以前の自分だったなら、それだけですべてが満たされていた。
今の自分が感じているのは、イノベイトとして自覚しリボンズからヴェーダを奪還出来た安堵だ。
これからの人間と迎える課題を、どう導いていくのか。
それはまだ先の事だとティエリアは思い直した。
まだまだ自分達の出番は来ない。
ティエリアは、そこまで考えて『自分達』という言葉に引っ掛かった。
慌てて閉じていた瞳を開ける。
視界に入ってきたのは、ティエリアを此処へと導いた者。
「リ、リジェネ……」
「ようやく気付いた」
リジェネは呆れた様に肩を竦めティエリアに皮肉っぽく笑みを浮かべる。
「此処には、僕と君だけ」ティエリアの頬を指先で触れてくるリジェネに、ティエリアはまばたきて先を促す。