冬休みが終わり新学期が始まった。
夏休みのように登校日もないので、ティエリアも久々に学校に登校した。
自分の教室へ向かう前に職員室へと向かった。
ティエリアのクラスの担当だった教師が冬休みから産休に入ってしまい、新学期から新しい教師が来ることになっている為、クラス委員長であるティエリアが会いに行くことになっていた。
「失礼します」
「おお、ティエリア」
学年担当のイアンが職員室に入ってきたティエリアに向けて手を上げる。
「おはようございます」
近づいて軽く会釈して挨拶をする。
「わざわざすまないな」
「いえ、構いません」
そう言って、職員室を見渡すが、新しく来た教師の姿は見えなかった。
「今、校長室で挨拶をしてるよ」
イアンの言葉にティエリアは納得してそのまま待つことにした。
しばらくすると、職員室と校長室を繋ぐ扉が開き見たことのない男性が出てきた。
年はまだ若く、ティエリアともそんなに離れていない印象だった。
きっと大学を出てそんなに時が経ってないのだろう。
着ているスーツも特に目立っているわけではないのだが、すらっと高い身長とスタイルの影響でモデルのようにも見える。
職員室へ向かう最中すれ違った女生徒が妙に色めき立っていたのはこの新任教師の影響かとティエリアは冷静に思った。
「おーい、こっちだ」
イアンが出てきた人物に向けて手を上げて呼ぶ。
それに気付きその人物は頭をかきながら近づいてきた。
「ティエリア、こちらが今日からお前のクラスを担当するロックオン・ストラトス先生だ」
近づいてきたロックオンとティエリアを向き合うようにしてイアンがティエリアに紹介する。
「で、こっちがティエリア・アーデ、クラス委員長をしておる」
今度はロックオンに向けティエリアを紹介する。
「君が委員長かぁ」
しっかりしてそうで安心したよとロックオンは笑顔でティエリアに声を掛ける。
「初めまして、ロックオン先生」
「ああ、よろしく頼むよ」
「よろしくお願いします」
軽く会釈をし、ティエリアは改めてロックオンを見た。
栗毛のしなやかな髪に深い碧の瞳。整った顔立ちは、やはり目立っていた。
「ティエリア、教室まで案内よろしく頼むよ」
そう言うとイアンは自分の席へと戻り準備を始めた。
それを見届けてティエリアはロックオンに声を掛ける。
「行けますか?」
「少し待ってくれるか」
ロックオンはそう言うと、自分の机に行き、資料を手にしていた。
「すまないな、さすがにまだ生徒全員は簡単には覚えられないからな」
「そうですね」
どうやら、手にしたのは生徒の名簿のようで、クラスのメンバーの名前が並んでいた。
ティエリアは準備の出来たロックオンを連れ、教室へと向かった。
見慣れない廊下を進み、階段を上がる。ロックオンはティエリアの後をついていく。
「委員長がティエリア……、ああ、ここに印があった。これが委員長ってことか」
廊下を歩きながら名簿を確認しているロックオンがティエリアの名前を見つけて納得する。
そこである違和感に気付きティエリアに声を掛ける。
「なあ、ティエリア」
「何ですか?」
淡々と返してくるティエリアをもう一度ロックオンは見つめた。
そして、上から下、下から上とティエリアを見て首を傾げる。
「お前さんは男?」
「はい」
ロックオンは名簿でティエリアの名前を見つけたが、その見つけた名前が記されていた場所が、男性の欄だったことに気付いて違和感を覚える。
何故ならティエリアは女性制服を着用していたからだ。
しかもそれが違和感なく良く似合っていた。
ティエリアの第一印象からふざけて着ているのではないのだと思うのだが、こうして性別を指摘しても特に慌てることもなく、かといって何かを弁解するわけでもない。
しかも、そのことを誰も気にしてはいなかった。
先程までいた職員室でもイアンをはじめ、他の先生がもそれについて誰一人として指摘しなかった。
理由について、触れていいものなのかどうなのかわからず、ロックオンはそれ以上言及できなかった。
きっと、これが日常なのだろう。ロックオンはそう納得することにした。
それが、ロックオンとティエリアの出会い。
Fin.....